Creation of “Super Eucalyptus” with the Molecular Breeding Technique
Abstract
王子製紙森林資源研究所(三重県亀山市)は,独自の遺伝子組換え技術を用いて,「乾燥ストレス耐性ユーカリ」,「酸性土壌耐性ユーカリ」といった環境ストレス耐性ユーカリの作出に成功し,閉鎖環境における育成評価並びに安全性評価を実施済である。これらは劣悪地における植林による「原料増産」を目指し,事業での活用に向けて,カルタヘナ議定書補完状況をはじめ,遺伝子組換え樹木利用に関する情報収集等を継続している。また,製紙原料の質的向上のために,材質特性に優れるユーカリの作出を目指した育種研究を進めており,これまでに,材質決定の主要因である木質バイオマスを構成するセルロースやリグニンの生合成機構を解析し,個々の主要遺伝子において特許を出願した。しかしながら,木質バイオマスといった複合的な性質を改良するためには,これまでに明らかとなった種々の遺伝子を総合的に制御する必要があり,これを解決するためにはユーカリのゲノム遺伝子情報に基づいた育種戦略の構築が不可欠であると考え,2001年にユーカリのゲノム情報データベース(大規模ESTデータベース:ユーカリで働いている遺伝子を全て網羅)を世界に先駆けて構築した。2002年より,独立行政法人,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)による「植物物質生産プロセス制御基盤技術開発」委託研究による研究資金を得て,2009年までの8年間にわたり,生長性向上,セルロース量増大,繊維長改良といった総括的な育種特性に優れるユーカリ新品種の作出を実施した。本稿では,王子製紙森林資源研究所が取り組んでいるユーカリゲノム解析に基づく材質改良を目的とした新品種ユーカリ作出に関する最新の研究成果を紹介する。